No.1− No.5


No.1 金星/想い出波止場 (1995/日本)

   あぁ、やっぱり一発目は、想い出波止場 『金星』。って言うくらい、めっちゃ好きでたまらないのが、これ。たぶん90年代で1枚って言われれば、わたしゃ、これを選びます。想い出波止場に関しては、もちろんどれもが必聴もんですが、この「金星」と付けられたタイトルのアルバム、アバンギャルドかつ実験的、その上ポップでバカバカしい傑作です。以前の作品に比べると、結構キャッチーな曲もあったりして、かなり聴きやすく(?)なっていますが、決して売らんが為の日よったような音ではなくて、意味不明の曲タイトルと歌詞、かなり自由度の高い変幻自在のサウンドで、想い出波止場でしかあり得ない音風景を見せてくれています。爆裂音もあるし、ジャンクなゲロッピもあるが、印象的なメロディーもあるし、頭でリフレインするような曲もまたあり。おもちゃ箱ひっくり返し状態の、まさに音の玉手箱。日本が世界へ誇るべきものだと、まじ思います。


No.2 LOVELESS/MY BLOODY VALENTINE (1991/イギリス)

   怒濤のノイズギターに甘いメロディー。ハッピーバレーとかシュゲーザーだなんて、呼ばれてましたね、そう言えば。はや10年ほど前のことですか、なんとも時が立つのは早いもんです。このマイ・ブラディ・ヴァレンタインの傑作3rdアルバム、いっとき、僕の頭ん中のヘヴィ・ローテーションで、ぐるぐるぐるぐる、とぐろを巻くようにリフレインし続けていたのを思い出します。凶暴なフィード・バック・ノイズに甘美なメロディーという、ジーザス・アンド・メリーチェインが発明したスタイルをさらに押し進め、ギター・ノイズとメロディーの融合をより深化させ、独自のサイケデリック空間を創出。ひずんだ轟音ギター・サウンドを幾層にも重厚に織り込んだ悪夢のような音、しかしメロディー・ラインをしっかりと持った曲調で、ノイズの彼方に美しいメロディーが浮かんでくるといった桃源郷のような世界を展開している。決して前向きな音じゃないし、ネガティヴな方向へ引きずられるタイプの音だが、しかし身体が抗うことのできない魅力を備えていて、なんとも言えないような恍惚感を覚えたりして。癖になります。


No.3 ZEN ARCADE/HUSKER DU (1984/アメリカ)

  まだテレビでMTVが全盛期だった頃、SONY MUSIC TV という番組(懐かしい!)で、パンク特集というプログラムが組まれたことがあり、その中で、ハスカー・ドゥのライヴが放映されたのを見たことがあります。ザーザーシャカシャカ鳴りまくるうるさいギターに、直立でがなっているボブ・モウルドを見て、ありゃ、こんなバンドだったんだ、と思ったのを覚えています。そういう直情的パンクバンドの、音の幅が大きく広がったのが本作。
   はちゃめちゃな演奏と、なぜか胸がときめいてしまうようなポップなメロディー・ライン。ボーカルスタイルにも変化が見え、楽曲のスタイルもヴァラエティに富んでいます。メロコアの元祖ともいえ、その後のギター・バンドへ与えた影響は大きい。このアルバムは2枚組の大作で、USハードコアとしては異色。ポップかつ、フリーキーな爆音系の曲には、いやがおうにも盛り上がって、高鳴る胸のときめきを押さえることができません。つづく次作は、『NEW DAY RISING』。もう、なんにもいうことはありませんね。


No.4 ATTAKCK OF THE KILLER B'S/ANTHRAX (1991/アメリカ)

   スラッシュ・メタルと俗に言われる一連のバンドで、その雑食性と楽曲のヴァラエティさにおいて、話題にのぼることが多かったのがアンスラックス。通常のアルバムでは、怒濤のスラッシュ・ナンバーを繰り出していた彼らだが、このシングルB面や未発表テイクをまとめた今作では、なんともヴァラエティにとんだ楽曲群を披露していて、痛快、痛快。企画盤にもかかわらず、この年の米国ロックの重要な作品の一つにあげられます
   その多彩な楽曲群の中で、ディスチャージやキッスのカバーなんかに混じって、ひたすら輝いているナンバーがパブリック・エナミーの 『BRING THE NOISE』 のカバー!パブリック・エナミーの名曲をスラッシュ化し、チャック.D本人がラップで競演しているという重戦車のごときナンバーです。ハードコア・パンクとハードコア・ラップ、まさにハードコアという言葉がぴったりで、ラン.DMCとエアロスミス以来のこの試みは、この時期のアンスラックスを決定的に重要なバンドとして位置づける事となりました。この曲だけでも、買い、です。いや、ほんま。


No.5 あぶらだこ/あぶらだこ (1996/日本)

   あぶらだこ、と、この名前を口にしたときの何とも言えない意味不明な響き。日本の至宝、あぶらだこは、この極東の島国にのみ生息する、なんとも不可解な生物。しかもメジャーからCDまで出しているっう、とんでもなく素晴らしい、まさに東洋の神秘、誇るべき我らの天然記念物。
  あぶらだこ、はもちろん、たこが演奏している。たこが、変拍子と凶暴なギターで完全武装し、意味不明の歌詞のようなものをわめきちらしたり、つぶやいたりしている。そこから発せられる言葉は一応日本語の体裁をとっているが、意味の内容は、たこにしかわからないようになっていて、聴いている側がいくら読みに読みを重ねて深読みしようが、言葉の迷宮にはまり込んでしまうだけで、結局は徒労に終わってしまう。たこの言葉を読み解こうとするのが間違っているのだ。たこの発する言葉を理解しようとするのではなく、素直にそのまま受け入れることだ。考えるな、感じるんだ、だ。それによって、たことの意志がくみ交わせる可能性が見えてくるってもんでしょう。
   あぶらだこ、それにしても唯一無二の存在。この地球上で、同類を見つけることは、恐らく至難の技でしょう。こういうのを、オリジナリティのある音楽っていうんでしょうね、たぶん。


   
 

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