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近鉄の阿部野橋駅から吉野行き急行で約１時間10分、下市口駅。駅の南側、国道とは名ばかりの国道309号線沿いに南へ歩く。しばらく行くと左手に郵便局があり、その辺りを左へ、川に架かる橋の向こう側に、風情あふれる渋い外観の銭湯が。 川辺に佇む、なんともいえない素敵な光景。正面に立つと壁があって、その両端から暖簾が見える。玄関の上には小さめの唐破風屋根。上にかかる屋号看板もいい感じ。こじんまりとした玄関口いっぱいの暖簾をくぐると、これまたこじんまりとした引き戸があり、こちらから中へ。ちなみに左側が男湯、右側が女湯。 入ると土間があり大きな札の木製下足箱が並ぶ。右手には低い高さの番台。番台の頭の上には立派な神棚が祭られている。向い側には小型の白色招き猫。間仕切壁の上にはなんと、透かし彫りの彫刻。天井を見上げると格子状で、3枚羽根の天井扇風機がぶら下っている。真上に1つ、そして間仕切壁上にも1つ。 目をひくのが脱衣ロッカー。木製で大きな漢数字が書かれている。その漢数字、旧漢字が書かれていて渋いのなんの。脱衣所中央にはどっしりとした木のベンチが2つ向かい合っている。浴室入り口横には花のミニタイル絵。上には額入り絵画が並ぶ。そしてこのレトロな空間に不似合いなようだが、シャープの液晶テレビが置かれている。 そして浴室へ。そのシンプルな空間に湯舟が2つ。深と浅、浅内には超音波気泡ジェットが2連。けっこう強力なジェット噴射。壁上には大きなモザイクタイル絵。山や川の自然の風景がデザインされている。洗い場のカランには、それぞれ「あつい」「うめる」と手書きで書かれているのが、なんとも微笑ましい。 しかしそれにしても、渋い銭湯とはこのような銭湯を言うのだ、とあらためて思う。その佇まい、その造りとレイアウト、仕掛けの数々、素晴らしいと心から思う。時間とお金をかけて訪れて大正解。いつまで営業を続けられるのかはわからないが、末永くこの先も続けていただきたいと勝手に思う。いい時間を過ごさせていただきました。 |