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ＪＲの熱海駅から駅前の仲見世商店街の賑やかな通りから道なりに坂道をくだる。しばらく行くと、坂道の中腹辺りに、なんとも言えない佇まいの旅館が１軒。何気にさりげに、大きな観光ホテルだらけの熱海の温泉街にあって、これは貴重やないですか。熱海が大型観光地化する以前からここにいまっせ、というような主張を勝手に想像してしまうような外観だ。 温泉旅館だが、日帰り入浴が可能。玄関を入ると、左手に受付があり、入浴料金を払う。お風呂はその先、と指示を受けてそちらへ。動線は短い。中へ入ると、思わずため息。おお、これはこれはこれは・・・時間空間遡り、無敵のタイムスリップ空間だ。板張りの脱衣所、脱衣は木の棚、その前には大きな脱衣籠。ちょっと暗いが、それがまた雰囲気を盛り上げる。 そして浴室。広めの浴室内、広めの浴槽がどーんと。その隣に深いタイプの浴槽が１つあったが、お湯は張られていない。洗い場は、お湯と水の長い蛇口、その下にタライが置かれている。このタライにお湯入れて洗うの？？？他にお客さんもいないし、ちょっとわからない。まあいいか、気にせず体を洗う。 その広い浴槽。無色透明、無臭のお湯。熱海温泉らしく、塩味あり。浴感は特に無いが、湯上り後はぽっかぽかだ。そして何よりも、この雰囲気。確実に僕の生まれる前の世界だ。この空間に身をゆだねることのできるうれしさよ、つい長湯をしてしまいそう。いや、たまりません。 |